アキレス腱断裂
アキレス腱断裂とはアキレス腱の一部または全て連続性を断たれてしまい切れる事です。多く見られるのは30〜40歳代で、50歳以上でも受傷をすることはあります。主にスポーツ中にジャンプの着地時や、ダッシュ、勢いよく踏み込んだ際にアキレス腱に強い力が加わった時に起こります。受傷時は足を強く蹴られたような感覚があり、周囲の人に聞こえるほど「ブチっ」という鈍い音が出ます。
アキレス腱は膝の裏から踵まで繋がっているふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)が踵に付着する際の腱になる部分を指します。下腿三頭筋は範囲が広く、大きな筋肉な為、引っ張る力が強いのが特徴です。下腿三頭筋の柔軟性が低下していたり、疲労が蓄積していて、筋肉の伸び縮みがしにくい状態で過度な運動をすると負傷しやすくなります。受傷後は歩行は困難となりますが、なんとか歩行は可能です。つま先立ちができなくなるので特徴です。
ふくらはぎ(下腿三頭筋)の柔軟性が低下していたり、筋肉の緊張が強く、伸び縮みがしにくい状態のまま過度な運動をする事が代表的な発生原因となっています。下腿三頭筋の作用として足首を伸ばす動きに関与しています。地面を蹴ったり、跳んだりする時に大きく働く筋肉です。
好発年齢が30〜40歳代に多く男女比は女性に多いと言われいましたが、近年は男性の割合の方が高くなっているという文献もあります。
年齢から考えられる原因として
・日頃デスクワークや立ち仕事で足への負担が大きい
・週末のみ運動したり、月に数回の運動が多い
・生活習慣病から体重が増加し、筋力が低下してくる時期である
・昔のように動けるだろうと過信している
・日頃十分なケア、運動前の準備が不足している
以上のことが考えられます。学生のように部活動やクラブで週に何回も練習をし、体を頻繁に動かしていれば運動神経や感覚がさえているが、平日仕事をして週末運動をする社会人の方は運動神経も鈍り、筋肉の状態も悪くなっている為、怪我のリスクは高まる事は一目瞭然ですね。
レントゲン上ははっきりとは写らない事が多く、MRI上ではより分かりやすく確認ができると言われています。整骨院でも徒手検査や超音波診断装置(エコー)で判断する事は可能です。状態としてはアキレス腱断裂部に陥凹(へこみ)が触れられ、同部に圧痛もあります。
<徒手検査法>
・トンプソンテスト
ベッドにうつ伏せになり、膝を直角に曲げた状態でふくらはぎをつまむと、正常なアキレス腱では足関節の底屈(足関節が伸ばせれる)が見られますが、アキレス腱が断裂する底屈の動きがみられなくなる事が特徴となります。
断裂をしても連続性が保たれている筋肉が働き、歩行はなんとか可能です。つま先立ちをしようとしても力が入らずにできません。
アキレス腱の損傷は3つに分けられます。
① 完全断裂
アキレス腱が完全に切れている状態です。アキレス腱はふくらはぎの筋肉と、かかとの骨をつなぐ太い腱です。アキレス腱はスポーツなどで強い力がかかったときに切れてしまうことがあります。
② 部分断裂
アキレス腱の一部が切れている状態です。
③ アキレス腱炎
ふくらはぎの筋肉と踵の骨をつなぐアキレス腱の周囲が炎症を起こした状態です。自分の足に合っていない靴を長時間履き続けたり、スポーツなどでアキレス腱に強い力がかかったりすると、アキレス腱に小さな断裂が生じて、炎症が起こります。主な症状は痛みで動き始めに最も強く痛むのが特徴です。
アキレス腱の治療には手術をせずにギプスや固定装具を使う「保存療法」と断裂したアキレス腱を直接縫合する「観血療法(手術)」があります。手術をするかしないかは担当医に判断によって異なる事が多いですが、一般的には完全に断裂がしていなければ「保存療法」での治療が多く、完全に断裂してしまい、連続性が著しく断たれている場合は「観血療法」となる事が多いようです。ですが、完全断裂でも「保存療法」で完治したという方もいますので、一概には言えません。
2つの治療法にはそれぞれメリットがあります。
<保存療法>
手術による侵襲がない事です。(手術跡が残らない事)ギプスや固定装具を使いながら、アキレス腱に負担がかからないように固定をします。治療を開始して、約3ヶ月ほどで正常な歩行が可能となります。約半年後を目安にスポーツへの復帰が見込めます。
<観血療法>
メリットとして治療中の再断裂がおきない事です。また早期に仕事復帰やスポーツ復帰を希望される場合は観血療法となります。スポーツ選手の方は早期からリハビリを開始する事で、損傷部位付近の筋力低下や可動域低下を防ぎ、復帰までの期間が短縮できます。手術後はアキレス腱への負担を減らす固定装具を使い、術後約2ヶ月で正常な歩行が可能となり、約半年でスポーツへの復帰が見込めます。
※復帰への期間はあくまでも統計上ですので、個人差はあります。
アキレス腱断裂の固定は症状の程度、保存療法か観血的療法で異なります。
<保存療法>
固定する際に膝関節を軽度屈曲、足関節最大底屈位(50~60°)で膝上まで2週間のギプス固定を行います。3週目から膝下で足関節を自然下垂位(30~40°)で2週間のギプス固定を行います。さらに5~6週の2週間は足関節良肢位(0°)に近づけ、ヒールをつけ荷重をかけられるギプス固定を行います。
7週目頃にギプスを外し、足関節ロック付きの装具に変えて、10週で全荷重がかけられるように指導します。13週目からは少しずつ運動療法、リハビリを開始します。
<観血的療法>
術後は足関節自然下垂位膝下で2週間のギプス固定をします。3週目では足関節良肢位膝下で2週間のギプス固定でヒールを着けて部分荷重をしていきます。5週目より足関節自動運動を開始し、6週目より歩行開始とします。そして3カ月目より軽いスポーツを始めていきます。
保存療法では断裂部分が回復するまでに時間を要するので、固定期間は長くなります。観血的療法では断裂部分を修復した状態での固定となるので、固定期間は短く、早期復帰が見込めます。やはり固定期間が長くなると周囲の筋肉の萎縮や筋力低下、柔軟性の低下が見られてきます。しかし観血的療法の場合は手術痕が残る為、担当医とよく相談をしていく事が重要です。
基本的には入院をする事は手術日前後1日程とされています。保存療法の場合は入院をせずに自宅療養となります。しかし固定が広範囲で強度なものとなるので、日常生活内で支障が出る事は多くあります。
アキレス腱は下腿三頭筋の付着部に当たる部位ですので、下腿三頭筋の柔軟性はとても重要となります。その拮抗筋である前脛骨筋や腓骨筋の柔軟性も高めておく事が良いでしょう。またアキレス腱が足関節背屈時に過度なストレスがかかるので、足関節の可動域を高めておく事も予防に繋がります。簡単なストレッチで予防をする事ができます。アキレス腱伸ばしや、前屈のストレッチ、足関節を動かしたりする事が良いです。
<症状について>
当院では触診や徒手検査法、エコー(画像診断)で患部の状態を確認していきます。確認後、必要に応じて提携先の整形外科を紹介し、レントゲン撮影や担当医に診断を委ねます。
<施術について>
損傷部の治癒促進を目的に超音波で組織の回復を促進していきます。またパルス波や低周波の電気療法、手技療法で筋肉に対してアプローチをし、柔軟性、可動域の向上をしていきます。また固定期間中に衰えた筋力を強化しながらリハビリを行います。また片側性の症状ですので、二次的に健側の筋肉へ負担が大きくかかります。体のバランスが乱れたり、筋緊張が出やすく痛みを伴う事が多くあります。患側のみならず体を全体的に以前の状態に戻し一日でも早く日常生活に復帰できるように施術を施していきます。